カブトムシもクワガタも掴めますと言うと驚かれます。
こんにちは。Blissです。
私の生まれ育った田舎に帰ると、とにかく虫が多いと感じる。
田舎暮らしに憧れている人には申し訳ないが、
田舎は夏になるとそこら中、虫だらけだぞ!
春になると蝶々やてんとう虫、
初夏にはショウリョウバッタが庭先に現れる。
初夏になると蛍の季節となり、実家は渓流の横にあるため気が向くと家のベランダまで来てくれて、ご自慢のお尻の光を披露してくれたりもする。
夏の終わりにはシオカラトンボやオニヤンマと、虫の登場で季節を感じる風情が味わえる。
虫の中にはみんなの大嫌いなカメムシ、クモやムカデもいる。(なぜかGは少ない。Gの天敵が多いからだろうか。)
なんて。
しょっぱなから虫の話ですみません。
でもここからはさらに虫の話になります。
最近読んだ本『バッタを倒しにアフリカへ』が面白く胸が熱くなったのでお話ししたい。
上の字もバッタ色にしてみました。
思わず二度見してしまうような、表紙の本はそうそうお目にかかれない。
その貴重なインパクトのある本の一つがこの『バッタを倒しにアフリカへ』だ。
ふざけているのか真面目なのか、表紙にはバッタ風のコスプレをして虫取り網を構えるお兄さん。ちゃんと頭と触角までつき、顔も緑に塗り込む手の込みよう。
背景には無機質で乾いた砂色の背景が広がり、どこが壁だか地面だか分からない不気味さもあいまって、被写体である著者・前野ウルド浩太郎氏の緑色がより一層際立っている。
「あ。この表紙見たことある!」という方もいるだろう。
「えっと、吉〇の芸人さん?」なんて勘違いしたのは私だけではないはずだ。
これでいて表紙のバッタ男・前野氏は「バッタアレルギー」で、バッタに触れると肌がエラいことになってしまうのだそうだ。
アレルギーを発症した理由は、自身のバッタ研究でバッタを触りすぎたため。
バッタ研究者なのに。
前野氏がバッタ研究に没頭する動機も不純だ。
幼少期にTVで見たバラエティ番組で、バッタの大群が女性レポーターが着ていた緑色の服をかじってしまうシーンを見て衝撃を受ける。
このとき幼い前野氏の心に、
「バッタの大群に食べられたい。」という感情が芽生えたらしい。変態である。
やがてそれは将来の夢になり、研究の最大の目的=ロマンになっていった。
・・もう頭がついてこない。
インパクトがあるのは決して見た目だけではない。
アフリカの自然に翻弄されながら、どう聞いても不純な(?)男のロマンを求めて血と涙と汗と砂にまみれてアフリカで戦う、日本人研究者のタマゴの話だ。
日本人には馴染みの薄い蝗害(こうがい)という被害
表紙のバッタ男こと、本書の著者・前野ウルド浩太郎氏は、アフリカ原産の「サバクトビバッタ」の研究者であり、
幼少期からの夢だった「バッタの大群に食われる」という夢を果たすため、日本から数千キロ離れたアフリカ・モーリタニアへ降り立った。
(「ウルド」と名前がつくが日本人である。モーリタニアの研究所の所長から現地人では一般的な名誉ある男子の名前「ウルド」を授かっている。)
モーリタニア、どこかで聞いた事あると思ったあなた。
さてはタコ🐙をよくお召し上がりになりますね?
スーパーに並ぶタコには「モーリタニア産」が多く、日本時の誰もが一度は目にした事がある国名なのに、全くピンとこない不思議な国である。
そもそもモーリタニアはアフリカの国と知っている人はどれだけいるだろう。
モーリタニアなどのアフリカの国々では、毎年ある時期がくると、どこからともなく集まった数億ものバッタの大群が大移動する。
移動の際には草という草を食い尽くしてしまい、草がなくなると隣の土地へ、さらに隣の土地へと侵略していく。
この大移動を放っておくと、農業が甚大なダメージを受けてしまい、経済も破綻しかねないほどの被害を被ってしまうのだ。
そこで、バッタによる被害=「蝗害(こうがい)」に対処するため現地では研究所や対策本部が置かれており、
毎年「バッタ注意報」が発令されると、国のバッタ対策本部はバッタを駆除するため一斉に被害地域へと散らばり、一日中バッタの移動に合わせてバッタ駆除網を張り対策に追われる。
日本でも春になると「花粉注意報」夏には「熱中症注意報」などが出るが、
モーリタニアでは国を挙げてレベル違いの対策を取らなければ、バッタ被害が広がり経済が危ない。
モーリタニアにある研究所兼・蝗害対策室の一つに前野氏は籍を置いて、ひたすらサバクトビバッタの研究に没頭することになる。
蝗害なんて、チラッとニュースで聞いた事あるぐらいで、日本では馴染みが薄い言葉なのではないだろうか。
この記事書いているとき、なぜか「えんがい」と勘違いしていた私はいくらPCで文字を変換しても蝗害の文字が出なくて焦った。正しくは「こうがい」だ。
蝗害なんて遠く離れたアフリカの話で日本には関係ないと思ってしまいがちだが、
異常気象などで気候のバランスが変われば、日本だっていつ蝗害の被害に合うやもしれないし、全く無縁とも言い切れない。
アフリカの砂漠に果敢に生きるどう猛な(?)仲間たち
昼間は気温が40度近く達するのに、夜になると一気に気温が下がり15度以下になる砂漠特有の気候のもと、現地の人は肌寒い朝は厚着で昼は半袖という生活を強いられる。
んでもって、アフリカなので暖房がない。おそらく1日のうちほとんどが高温なので暖房という概念が薄いのかもしれないが、そのおかげで夜は低気温の中、震える思いをすることもあるのだそうだ。
まあ色々と極端な環境で、私たちが想像していたアフリカの過酷さがある。
前野氏のいる研究所では、多種多様なムシキングたちが登場する。
まず主役は、
本当はアレルギーだけど恋焦がれるほど大好きな研究対象のサバクトビバッタ。
そこら中にいて最終的に研究のネタとして活躍する「ゴミムシダマシ(略してゴミダマ)」。
そして、すきあらばコロンと丸くなって敵から身を守る、野生のハンター・ハリネズミ(かわいい)。
砂漠オブ砂漠で砂漠しかない過酷な環境下にあっても、多種多様な生物や植物を垣間見ることができる。
研究所とフランスの研究所、そして日本を行ったり来たりする前野氏を支える研究所の仲間たちは目頭が熱くなる。
実は、本書の魅力の主成分は人間ドラマだったりする。
研究所では現地モーリタニア人の研究者や助手スタッフがおり、
一番の理解者であり前野氏が尊敬してやまない優しいババ所長、
金銭感覚はダメダメだけど、前野氏の右腕となり超絶ドライブテクニックで砂漠の道なき道を無双するティジャニ、
イマイチ頼りない学生だけど頼りになる通訳・モハメド、
屈託のない子供たち、ヤギの肉や牛乳に目がない現地の人の姿など、
キャラもなかなか濃く、その裏表のない素直さに心を打たれる。
前野氏の研究を陰で支えつつ、平和な日本人感覚でいる前野氏に、時に痛いぴしゃりと痛〜いお灸を据えたりと、
人間的にも成長させてくれるいいヤツらなのだ。
海外に行くとやりがちなことに、日本人の価値観を持ったまま物事を判断してしまうことだ。
アフリカの多くの国ではいまだに地雷原があったり、紛争の絶えない国もあるし、
日常でも日本では理解できないような文化風習が根強い。
太っちょな女性が最高級にモテるとの熱い信仰や、ケガをしても薬より”おまじない”を優先されたり(!)と、驚かされるのだが同時に興味深いと感じる。
ちょっとした悲劇もあったりと、
前野氏もうっかりそんな超日本人的な価値観で現地人と接してしまい、
後でこっぴどい目にあったりと、日本人ならではの悲喜こもごもなエピソードがあったりと面白い。
勇気と元気をもらえる本
「YOUは何しに日本へ?」という番組がある。
極東の日本へ来た外国人(多くは欧米人)に日本に来た理由を尋ねながらその背景をうっかり聞いちゃおう、という趣旨の番組である。
モーリタニアの人からしたらYOUは何しにアフリカへ?といった具合で、
”平たい顔族”の東アジア人なんて物珍しいに違いない。
文化も人種も気候も何もかも正反対の国で暮らすことってめちゃくちゃハードなんだけど、
自分の「知っている」という知識の外をを飛び出して限界を超えるには、
むしろ、日本の生活と正反対の環境に身を置いた方が好都合なのかもしれない。
と言っても私にはアフリカに行く勇気はないが、
全く異なる環境に置かれたとしても割と抵抗がないタイプだ。(何を隠そう、共感力・順応性が高いのである。ガハハ)
本書によって大いに刺激を受けた私は、アフリカとまではいかなくても、いや海外、いやさらにもっとスケール小さくして・・日本国内の得体の知れない所に行ってみようと画策している。
月並みな感想で申し訳ないが、
日本のユル〜い環境からヒョイっと越えて、何かにチャレンジする勇気、
一見華やかな職業に見える「研究者」も、日本では取り巻く労働環境が不遇すぎて、その実態も本書を読むまで知らなかったことだ。
前野氏のギャグセンスで爆笑しながら読める貴重な本。
ぜひ、肩の力を抜いてアフリカのサファリツアーに行くつもりで読んで欲しい。
ただし、
像もキリンもライオンも、ザ・アフリカな動物さんたちは一切出てこないことを付け加えておく。
その代わり、多種多様な虫たちと人間味あふれる研究所の仲間たちによって、
読み終わる頃にはライオンや像のことはもう、どうでも良くなってるはずだ。
本全体の出演率は、サバクトビバッタが5割、3割がゴミムシダマシ(略してゴミダマ)、2割がハリネズミちゃんだ。
自然と言えばたまに行くっ公園の緑を見るぐらいで、
コンクリートの中に暮らして毎日消耗している日本人に、ふと子供の心と自然の偉大さを思い出してくれる、そんな良本です!
ぜひぜひ。
※日本で売られているタコにモーリタニア産が多い理由は、日本とモーリタニアが独自にモーリタニア産のタコ輸出のルートを作っているからだと本書で知りました。
モーリタニアの海岸には日本に輸出するためのタコ漁の一大拠点が築かれ、
タコツボがたくさん並ぶ港の光景が見れるそうです。さらには現地の人の雇用に日本が一躍買っており、日本人は好意的に見られてるとのこと。すごい!