こんにちは。BlissBliss⋆*@テキトーでもうまくいくです。
「大家さんと僕」がKindleで公開されていたので、名前は知っていて”さわり”だけ読んだことあったので、今回は全部通して読んでみました。
かなりの衝撃を受ける作品でした。もちろんいい意味で。
声だして笑ったかと思ったらホロリとさせられて、特に大家さんから語られる戦争の話にしんみりとしたり、
切ない純文学を読んでいるようで、心が洗われた私は読後もずーっと余韻に浸っていました。
ネタバレになるので本書の内容を話すのはちょっとだけにして。あらすじを。
お笑い芸人・カラテカの矢部さんが間借りしている部屋は、二階に矢部さんの部屋、一階に一人暮らしの大家の女性が住んでいるというちょっと変わった物件。
そんな作りなので、大家さんのお誘いで一緒にお茶を飲んだりしているうちに、大家さんと友情のようなものが生まれ交流を重ねていくんですね。
友情といっても大家さんは御歳87歳!入居するときには、大家さんはかなり高齢なので何かあったら連絡してほしいと不動産屋さんから前置きされたほど。
大家さんは戦前生まれで戦争経験者。上流のお生まれだったのでしょうか、所作が染み付いており、挨拶はいつも「ごきげんよう」など、言葉の端々に品性や育ちの良を感じるのです。
さらに大家さんの好きなタイプは「マッカーサー元帥」だったり、「横井庄一のモノマネ?」と聞かれたり(今の若い人絶対知らない説)、ときにはいつの時代の話!?とツッコミたくなるようなことを言って矢部さんを困らせたりするお茶目な大家さん。
矢部さんは大家さんにいかに喜んでもらうかを考えているうちに、いつしか大家さん中心の生活になっていくのですが・・
大家さんによって、自身が若い頃体験したであろう戦争の体験や長野での疎開先でのことなど、戦時中の話がところどころに語られるのですが、今は亡き祖母の戦争体験の記憶と重なりとても感慨深いですね。
うちの祖母は戦時中、埼玉県の旧大宮市にあった大きな軍需工場、祖母が言うところの「飛行機製造工場」で、数百人はいたであろう女工の一人として働いていました。
そこでは田舎から働きに来た齢18も届かない10代の娘たちが、機械音が鳴り響く薄暗い工場でせっせと飛行機の部品を作っていたと聞きました。
戦時中、祖母は14〜15歳ぐらいだったはずなので、尋常小学校を出てすぐ出稼ぎに行った計算になりますね。
今の中学生と同じ年頃の若い女の子たちが、来る日も来る日もお国のためにと働いたと考えると、当時の国の状況を考えたとしても察して余ります。
そんな戦時下と戦後の混乱期をかいくぐって来た祖母なので、「大家さん」と同じように、孫の私とはまったく住む世界が違っていました(笑)。当然っちゃ当然ですね。
ただし、都会の上流家庭で育ってきたであろう品のある「大家さん」と違って、うちの祖母は田舎育ちなのでせっかちで少々ガサツなところはありましたが。
戦後の混乱期ではありましたが、祖母にも青春時代は訪れたようで、ある時には縁談の話がもちあがり友達とはるばる電車に乗ってお相手の家を覗いてきたこととか、でも家柄が違いすぎて辞退したこととか、
つい最近では、祖母の死後に母が戸籍の整理をしていたら祖母の古い戸籍から、祖母は若い頃一度結婚していたことが判明。これは家族全員びっくりしました。
どうやら初婚のお相手は戦死をされたようで、夫の戦死後すぐ実家に戻された私の祖母は、のちの私の祖父となる若者と縁談を組まされたのでした。
これは祖母が亡くなるまで家族が全く知らない事実だったのですごい驚きました。
というか誰も知らないままだったのも、当時は良い意味でのおおらかさがあったからかも。
戦中戦後はこのような話はよくあったそうで、夫が戦死したことで夫の弟と結婚させられたり(!)、結婚してすぐ夫が召集されるもその後戦死、すぐに縁談が来て別の人と再婚したり、
長男が戦死したため婿に行った次男を呼び寄せるために次男夫婦が離婚を迫られたり、今の時代の価値観から見るとめちゃくちゃ・・。
誰でもいいから誰かと一緒になって欲しいと親親戚の圧力があったのは、家を守るために仕方ないところもありますが、実はそれこそが残された婦女子の救済策でした。
戦争経験者が一人また一人と世を去っていき、戦争のことはもちろん、昭和のことを語る人が年々減っていくのは悲しいですね。
・・というわけで。
「大家さんと僕」今さらですがとても感動しました。
目まぐるしい日々の生活にストレスを感じている方や、立ち止まって考えたい方は一読をオススメ。
矢部さんが描くゆるいタッチと天真爛漫な大家さん、内向的だけど心がとても優しい矢部さんのストーリーに心がほぐれていくはずです。
ではでは!