Amazonビデオで大島優子さん主演の映画「ロマンス」を観ました。
箱根ロマンスカーを舞台に、箱根の名所を巡りプチ旅行気分が味わえて
そこに恋愛ドラマが展開されるラブロマンスかと思ってましたが
予想外に心を揺さぶられて思わずホロリときちまったぜ!
あ〜この映画を勧めたい衝動がウズウズしてしているのですが、知名度があまりないようで、
あの時代の寵児である元AKBの大島優子さん主演であり映画初出演の作品なのにイマイチパッとしない。
なぜ?
それは多分、内容がしんみりしてしまうので、大島優子さんのキラキラしたイメージをいい意味で払拭してくれているからなのでは?と勝手に推測しています。
だって、アイドルとして大変キュートな活躍をされていた大島優子さんですが、この映画「ロマンス」では一転、
まとめ髪に制服姿だし、地味だし、まして仕事に厳しいフツーの仕事女子を演じているから
ちょっとギャップにやられてしまうかもしれない。
でもそれが良いんですけどね。
一日だけのロマンスにグッと心を揺さぶられるラブストーリー
単刀直入に言うと、これはロマンスムービーと言っていいのか悩みました。
タイトルでは「ロマンス」。
タイトルのぱっと見は何かこう、フワフワしたラブストーリー映画っぽくもある。(恋映画って何だそれ)
だけどもっと深いところでスッと浄化されるような静かな余韻が残る映画なんですよね。
以下、ネタバレを含みますのでご注意下さい。
身も蓋もないことを言ってしまえば、
ロマンス要素は名前が入っている「小田急ロマンスカー」しかありません。(汗)
繰り返しますが「大島優子主演×ロマンス」という女子受けしそうなタイトルとは裏腹に、ひと味もふた味も違う独特の雰囲気が美しい映画です。
大島演じる
どこか陰のある二人の人物像に冒頭からグイグイ引き込まれていきます。
「たった一日の出会いと別れ」という副題のとおり、お互い見ず知らずの鉢子と桜庭はひょんなことで運命をともにします。
共にする、なんて寄り添った言い方ではなく 「巻き込まれる」に近いかもしれません(笑)。
突然切って落とされた運命の火蓋はロマンスカーの終点駅、箱根湯本駅から切って落とされます。
職務中に運命に巻き込まれてしまった鉢子はああ哀れ。アテンダントの職務を放棄したまま桜庭のとっ散らかした旅行プランに同行する羽目になるんです。
気が強い仕事女子の鉢子、口がうまくイマイチ信用できない風体のおっさん、桜庭。
社会をフツーに生きているフリをしているのは仮の姿であり、お互いがグッと胸の奥底にしまい込んだ心の傷を少しずつ少しずつ吐露していきます。
劇中の箱根の空模様がいつも曇天なのはどことなく鉢子と桜庭の心の中を表しているようで、この切なさといったらない。
この描写。すごく好き。
鉢子のお母さんとの対話に注目
レンタカーで突然(強制的に)始まった旅ですが、箱根の名所を巡るうちに二人の仲は縮まっていくかのように見えます。
しかし、鉢子のうつろな目線の先には白昼夢のようにお母さんへの愛と憎しみが回想されます。
感情のおもむくまま根無し草のようにフラフラ生きてきて、ある時から人生のどん底に突き落とされた桜庭と、
根無し草のように自由奔放な母親に振り回されてきて、どこかあきらめたような惰性の人生を送る鉢子。
天の気まぐれな
それぞれの背景が交錯し、悩み、笑い、苦しみにうろたえ、ぶつかり合います。
人生はコインの神様のいうとおり
桜庭にはコインの裏表で物事をコイントスで決断するというユニークな習慣があるのですが、
「神様のいうとおり」に何度も投げられるコインはまさに宇宙の思し召すまま、何ともテキトーで風来坊な桜庭の人となりを表すようです。
箱根ロマンスカーに飛び乗る前、桜庭は「100円玉の表が出たら箱根、裏が出たら千葉かどこかへ行く」と決め、
コインが表だったから箱根に来たという単純な動機を話し始めます。
運命もコイン任せでテキトーなことをしているように見えて実はなかなか勇気のいることなんですよね。この恋んトスって。
しかも桜庭は極限の状態でコインを投げたわけで、これは自ら手綱を手放して「天の采配」に従ったということ。
お手上げ状態だとうまくいくなんて言われていますが、映画だけの話じゃなくても、奇跡はもうダメだと一旦手放した時に起きるのかもしれません。
まるで「今すぐロマンスカーに飛び乗って箱根で鉢子と出会う」と運命に決められているかのように、
その後の描写ではどん底の桜庭の道が開けたことを予感させる伏線が出てきます。
それにしてもコイントスで物事を決めるって・・すごいな。
重大な局面でコイントスしてその結果に従うなんて中々できることじゃありませんよね。
コインの表が出ようが、裏が出ようがそれに従ったことでどんな災難や失敗があろうとも
全力で信頼して忠実に実行する桜庭の姿勢には驚かされます。
(といってもこの後、桜庭のコイントスに重大な欠点が発覚するのですがそれは是非観てからのお楽しみ。)
頼りない桜庭の旅(プラスそれに付き合わされた哀れなロマンスカーのアテンダント)はハッピーエンドを迎えることができるのでしょうか。
旅の終わりは最高の余韻とともに
映画の余韻って大事よね。
ハッピーエンドであってもそうじゃなくてもこの余韻が全てじゃないかと思うんですが、
このロマンス。終わり方が最高。
観てのお楽しみだけどどうしても言いたい。
その余韻はまるでオール明けで酷使した目に飛び込んでくるあの光線のように強い朝の光。
昨日とはうって変わって、日常の始まりを告げるあの朝の空気感。
どこか一皮向けた鉢子と対比される逆行していく出勤する人々の流れ。
映画の締めくくりがとても丁寧に描かれていると思います。もう最高。(語彙力どうした)
AKBの中では一番大島優子さんが好きですが、アイドル出身とは思えない芯のある演技に引き込まれますね。
鉢子が「オッサン」に対して向けられる塩対応も最高。
鉢子がロマンスカーのアテンダントから制服を脱ぎフツーの悩める女子になったように、旅先では全て忘れて今を楽しむに尽きる。
終点の新宿駅で日常に戻ってくればいいのだから。
いいな〜。箱根版ロードムービーを見せてもらいました。
最後まで感情移入しっぱなしです。
箱根のローカル鉄道で「鉄分」補給
忘れてはいけないのはこの映画の主役はロマンスカーでもあるということ。
マイルド鉄道ファンとしては舞台にもなっている小田急ロマンスカーMSEや箱根登山鉄道のスイッチバックが楽しめるし、
ローカル電車以外にも黒たまごで有名な大湧谷や、仙石原のすすき草原など箱根の名所が沢山出てきてちょっとした箱根旅行気分に浸れます。
山口百恵さんの「いい日旅立ち」が旅愁たっぷりでストーリーを盛り上げていますが、ここで一つ訂正が。
「いい日旅立ち」が使われたのって確か他社のCM・・そんな野暮なことを言ってはいけません。
名曲「いい日旅立ち」は昔、国鉄のPRの一環として使われていたんですね。
今では東海道新幹線の車内チャイムでおなじみの曲ですね。
実はロマンスカーを運行する小田急電鉄とはカンケーない曲なんですが、旅情を感じさせる名曲であることには変わりありません。
番外編:脅威の困ったちゃん「久保チャン」にも注目
映画ロマンスにはもう一人の隠れた主役がいます。
一度見たら忘れられない強烈なキャラでなぜか印象に残ってしまう通称「クボちゃん」です。
このクボちゃん。どこの会社にも一人はいる、仕事できない&空気が読めない、いわば「困ったちゃん」なのであります。
鉢子の後輩として勤務するクボチャンはセンチメンタルな鉢子の心境なんて一切無視で直球で投げかけてきます。
でもなぜか憎めないクボちゃん。
しんみりさせる隙を与えない策士でもあります。
こういうキャラ好きだ。たまらん!
個性的な女優さんですごく気になって調べてみたら
野嵜好美さん主演の「ジャーマン+雨」では、周りから「ゴリラーマン」と呼ばれるガテン女子を演じています。↓
そんなクボチャン。普段は仕事ができずオドオドしがちですが、いざという時に先輩をかばう優しい心の持ち主です。
いつも読んで下さってありがとうございます。